「あ」
と幽かな叫び声をお挙げになった。
「髪の毛?」
スウプに何か、イヤなものでも入っていたのかしら、と思った。
「いいえ」
お母さまは、何事も無かったように、またひらりと一さじ、スウプをお口に流し込み、すましてお顔を横に向け、お勝手の窓の、満開の山桜に視線を送り、そうしてお顔を横に向けたまま、またひらりと一さじ、スウプを小さなお唇のあいだに滑り込ませた。ヒラリ、という形容は、お母さまの場合、決して誇張では無い。などにお食事のいただき方などとは、てんでまるで、違って。弟の直治がいつか、お酒を飲みながら、姉の私に向ってこう言った事がある。
「爵位があるから、貴族だというわけにはいかないんだぜ。爵位が無くても、天爵というものを持っている立派な貴族のひともあるし、おれたちのように爵位だけは持っていても、貴族どころか、賤民にちかいのもいる。岩島なんてのは(と直治の学友ののお名前を挙げて)あんなのは、まったく、新宿の遊廓の客引き番頭よりも、もっとげびてる感じじゃねえか。こないだも、柳井(と、やはり弟の学友で、子爵の御次男のかたのお名前を挙げて)の兄貴の結婚式に、あんちきしょう、タキシイドなんか、なんだってまた、タキシイドなんかを着て来る必要があるんだ、それはまあいいとして、テーブルスピーチの時に、あの野郎、ゴザイマスルという不可思議な言葉をつかったのには、げっとなった。気取るという事は、上品という事と、ぜんぜん無関係なあさましい虚勢だ。高等御下宿と書いてある看板が本郷あたりによくあったものだけれども、じっさい華族なんてものの大部分は、高等御乞食おんとでもいったようなものなんだ。しんの貴族は、あんな岩島みたいな下手な気取りかたなんか、しやしない1よ。おれたちの一族でも、ほんものの貴族は、まあ、ママくらいのものだろう。あれは、ほんものだよ。かなわねえところがある」
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1 しやしない (biến âm của「~しはしない」, và có thể biến âm hơn nữa thành 「~しはしねえ」
「~しは」=「~することは」しやしない (biến âm của 「~しはしない」)
「~しやしない」=「~すべきだがしない」, thể hiện sự bất mãn
Tắt
February 15, 2019
tớ là 1 con mèo lười, cám ơn cậu đã khơi dậy cho tớ niềm hứng thú khi đọc 1 bài viết bằng tiếng nhật 😊mong chờ những bài viết sau này và sau nữa được Porikochan chia sẻ. yêu xương cậu nhiều :X
February 15, 2019
こんにちは、 Mều さん